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PRESS RELEASE

平成15年4月10日
株式会社富士通ゼネラル
(NO.03-R01-03)

中国の上海交通大学とエアコン用熱交換器シミュレーターを共同開発

-世界初!(注1)、「オブジェクト指向(注2)プログラム法(OOP)(注3)」を適用-

この度当社は、中国の上海交通大学と、エアコンの重要なデバイスである熱交換器用シミュレ-ターを共同開発いたしました。このシミュレーターは利便性の高い「オブジェクト指向(注2)プログラム法(OOP法)(注3)」を世界で初めて(注1)適用したもので、2002年4月から取り組んでいる共同研究の最初の成果であります。この研究成果は、4月開催予定が本年秋に延期となった「International Conference on Cryogenics & Refrigeration (ICCR2003)(開催地:中国・杭州)」においても発表予定で、既に、本技術については、当社製品の開発に活用を開始しております。

開発の背景

エアコンは熱交換器の設計の良否によりその性能に大きな影響を受けます。高効率で環境に優しく経済的な熱交換器を効率的に開発・製造するためには、試作回数の削減や設計品質の向上などを図ることが可能な熱交換器シミュレ-ション技術の開発が急務となっております。

特に、中・大型エアコン用熱交換器の開発では、シミュレーションを用いない場合、試作コストが高く試験期間も長期にわたるという課題がありました。また、従来用いられていた「手続き指向プログラム法(POP法)(注4)」によるシミュレーターでは、使用する銅管、アルミフィンなどの形状、サイズ、あるいは各種冷媒など、様々な構成要素データの変更に素早く対応できず、この分野での適切なシミュレーション手法がありませんでした。

当社は、このような課題に対応すべく、2002年4月より、中国の上海交通大学と共同研究契約を結び、熱交換器用シミュレ-ターの開発に着手しました。

同大学は、冷凍サイクルおよび熱交換器についての 「手続き指向プログラム法(POP法)(注4)」によるシミュレーション技術に長け、高い研究実績を有しています。

当社の優れたエアコン製品の開発・製造力と上海交通大学の高いシミュレーション技術を背景に、熱交換器用シミュレーターに関する共同研究を進めてまいりました。今回、その最初の成果として、中・大型マルチエアコン用熱交換器シミュレーション技術に構成要素データの変更に強いという利便性をもった「オブジェクト指向(注2)プログラム法(OOP法)(注3)」を世界で初めて(注1)適用し、熱交換器シミュレーターを開発いたしました。

共同研究の内容と熱交換器シミュレーターの特長

1) 共同研究の内容

  1. 構成要素データを様々に変更して最適な設計を行うことができるよう熱交換器のシミュレーションに「OOP法」を適用するには、特に熱交換器の構造、運転条件および冷媒、空気物性値などを相互に影響の少ない機能(オブジェクト)にグループ(クラス)化する工夫が重要です。
    この度開発した熱交換器シミュレ-ターでは銅管、アルミフィンなど「部品」、「蒸発機能」、「凝縮機能」などをグループ(クラス)として扱うことにより、それらの中でしばしば変更される構成要素データの影響を受けることなく、「OOP法」の特長を生かした効率の良い熱交換器シミュレーションを行うことができました。また、構成要素データの変更に対し、それに対応するグループ(クラス)内に新しい設計デ-タを追加・変更するだけでシミュレ-ターを変更することなくそのまま使えるようになりました。
  2. 熱交換器のシミュレーションには、世界標準となっている熱物性値算出プログラム「REFPROP」を使いますが、「FORTRAN」(手続き型言語(注5))で書かれており、「C++」(「OOP法」用言語)から直接呼び出して使うことはできません。
    この問題解決のために、FORTRAN(手続き型言語(注5))で書かれた冷媒の熱物性値算出プログラム「REFPROP」を「C++」(「OOP法」用言語)で呼び出せる新たな「異言語間呼出方法」を開発しました。これにより、冷媒の熱物性値を簡単かつ効率的に呼び出すことができ、「OOP法」を熱交換器シミュレーターに適用することが可能となりました。

2) 熱交換器シミュレーターの特長

「オブジェクト指向プログラム法(OOP法)」を適用した熱交換器シミュレーターを使用することにより、

  1. 熱交換器構成要素データの変更に容易に対応でき、開発の生産性の向上が図れる。
  2. 構成要素データの変更の影響を受けにくいのでシミュレーターのメンテナンス性が良い。
  3. シミュレーターのグレードアップが容易である。

など、の特長からエアコンの熱交換器の開発期間短縮が図れ、さらには、冷凍サイクルのシミュレーターにも適用するなどの発展性があります。
(従来、熱交換器開発のための性能予測には、数時間から数日必要でしたが、わずか数分のシミュレーションで同じ性能予測が可能となりました。)

特許について

現在、特許を2件出願中です。

今後について

  1. 「OOP法」を活かした精度の高い熱交換器のシミュレーターの開発。
  2. 上海交通大学との成果を生かした本技術を用いた中国市場向けの空調機の開発を行い、ビジネスに寄与する。

以上

注釈

注1 世界初 :
平成15年4月現在 : 当社調べ
注2 オブジェクト指向 :
データ処理やシステム操作を、手続きの流れとしてではなく、「もの(オブジェクト)」同士の関係としてとらえる考え方。
注3 オブジェクト指向プログラム法(OOP法) :
オブジェクト指向の概念を用いたプログラミング手法。
注4 手続き指向プログラム法(POP法) :
データ処理や機能を、手続きの流れとしてプログラミングする手法。
注5 手続き型言語 :
コンピューターで行う処理の手順を、手続きを表す命令の集合体として記述する言語。

 

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